オーストラリアのビザ発行数が10%も減少。背景や影響は?

オーストラリアへの移民がますます難しくなってきています。特に労働と永住権からみの申請のチェックが厳しくなりビザのリジェクション(拒否)も上昇傾向です。

国内の景気状況をもろに反映する移民法ですが2018年には入ってから改悪の一方ですね。

今回の記事はここ1年でビザの発行数が10%も減ったことについて書いていきます。

外部リンク:Number of visas issued to live and work in Australia down by 10%

ビザの割当数が10%減少

オーストラリア政府は今年(2018年)のビザ発行数は数年前の同時期と比べて10%も減少した事を発表。

実際、どれくらい減ったのかと言うと、オーストラリアで永住権や労働関係のビザを申請する人がおおよそ20,000人も減っています。この減り具合は2007年以降で最低の数字だそう。

もともと、2016年は190,000人が自分のお仕事など能力に応じて申請できる技術系ビザの申請をしていましたが、翌年の2017年にその数は7千人減の183,000人になりなりました。さらに今年(2018年度)は10%減った162,000人がビザの申請をしたみたいですね。

Fall is due to less desirable people being weeded out by tougher application rules

移民局のPeter Dutton大臣が言うには、上の通りビザの申請条件が厳しくなったからだそう。

移民受け入れが減ったのは意図的?

ただ、移民局は1996年頃に、Skilled Migration Programといって、お仕事の技能によって移民を受け入れる導入しており、その制度移行に移民の数が減ったというわけではありません。

政府の移民統計を見てみると、1996年の前と後で移民受け入れの数を比べると明らかに以降のほうが増えています。

たったの2年間で2割以上も就労・永住系ビザの申請数が減っているのは明らかに意図的だと考えられます。

そう考えると、不況になると移民の国にありがちな、「外国人に仕事を奪われている」という考え(世論)が政治に影響しているのかもしれません。

ビザの発行数=移住の魅力

オーストラリアは他人を使って自分たちの生活を良くする政策は得意です。
それだけに

  • ビザの発行数=(潜在的な)労働力

ということになるので、移民を減らすまたは、今回のように移民受け入れを減らすことはすなわちオーストラリアの経済力の土台を崩しかねないことだと思っています。

さらに、移民(外国人)にとってオーストラリアは魅力の少ない国に思えてきます。

魅力の点でいうとオーストラリア政府も認めているところではありますが、今回の移民数減少について、ボクは2つの原因があると考えています。

オーストラリア移住の魅力が減少

ビザ申請条件を満たすためのボーダーラインが毎年高くなっている事。

毎年のように就労ビザ・永住権の申請基準が高くなり、今後は大学院レベルの学歴とネイティブ並みの英語、そしてそれを可能にするための「お金」が必要が重要なポイントになっています。

そういった条件をクリアするためにはおそらく、1つまたは2つの移民法改正は経験するはず。

そう考えると、もっと簡単に移住できるニュージランドやカナダのほうが確実じゃないか?と思うのは至極当然ですよね。

関連記事:ニュージランド移住の方法!オーストラリア移住のバックアップ。

ビザ申請の却下率が上がった

ビザの申請の際にウソの申請をする人もいます。例えば、職務経歴書を華やかにしたり、持ってもいない資格を書いたり。

日本人の方でもワーキングホリデーで仕事を探すときに同じ様に、嘘の経歴を書いた人はいるのではないでしょうか?そういうことです。

これまでオーストラリア政府はビザの申請書類をチェックするときにある程度、性善説(人は善人であるという前提)で対応していたのだと思いますが、現在の政府は性悪説で調べるとしています。

つまり、ビザ申請書類は正真正銘に書かれたのか「疑わしい」前提で調べるということ。

ビザの審査期間は長くなり、ビザの発行数が減ったことにも関係していますが、チェックが厳しくなったことでリジェクション率も上がっていると思います。

待ち時間については、移民局のホームページに待ち時間が載っているのですが2018年から大幅に長くなりました。例えば、ある永住権は2017年と2018年を比較するとなんと1年近くも長くなっています。(16ヶ月待ち)

約3倍の待ち時間になっています。

移民エージェントが提供している記事によるとビザの関係書類を複数人で2重チェックしたり、政府間で書類が本物か確認している事が確実なので処理時間は長くなりますね。

移民を「選ぶ」事で中・長期的なオーストラリアの成長を考えると必要なのかもしれませんね。

ただ、オーストラリア国内の業界からは悪影響も懸念されています。

経済的にはネガティブに影響

オーストラリアの経済界はこの点について「危機」という言葉を使っていて、地方や田舎町は労働者が見つけられない可能性が高く経済に悪影響を及ぼすと発表しています。

ボクはオーストラリアの経済がここまで成長したのは移民政策が大きなウエイトを締めていると思っています。

外国の優秀な人に長期滞在や永住権のビザを積極的に与え、その家族が国内の消費を底上げした結果が、繁栄した今のオーストラリアの姿だと考えていて、その元となっている移民政策のビザ申請基準を高くするということは、経済の支えとなる根底部分が脆弱になる事を意味します。

特に、人口が少なく経済的に脆い地方の地域はその被害をもっとも受けやすく、オーストラリア国内の経済界が危機という言葉を使って宣言しているのも納得。

ただ、オーストラリアの移民議会はそこまで強くは批判せず、成長が緩やかになる程度でもオーストラリア国民にとっては良いという結論も宣言しています。

移民政策を厳しくする理由

今、オーストラリアは住宅価格の高騰で大都市で家を買うと普通に1億(1,000,000ドル)します。ここパースでも中心地から20キロ圏内の家はどこも500,000ドル必要です。

さらに、金利が高いので最終的な支払総額は1.5倍増し以上に。

この住宅の支払額が高くなると、ローン返済が出来ない人が増えてくるので経済のリスクが増すわけです。

これまでのオーストラリアが経済成長したのは資源の輸出と住宅への投資。

  • 移民=住宅購入者

でもあるので、家の値段は年々上昇。その波に乗って家を購入する人が増えた結果、家の値段が上がりローン返済が出来ない人が増えているのです。

このままだと、破産する人も出てくるわけで、どこかで人口増に対する手を打たなければいけないということ。

オーストラリア政府の労働党はナショナリズムでも何でも無く、国内のリスク管理をしたいのですね。

これからの移民は地方都市が焦点に

大都市の移民政策は厳しく
地方都市の移民政策は優しく

オーストラリア政府はこれからの移民を地方に流したいと考えていて、移民政策は経済的な面と地域の人口管理の2つの側面を併せ持つことになりそうです。

そうやって物価やリスクをコントロールしていくのかもしれませんね。

そう考えると、今後のオーストラリアの移民政策は、大都市圏に対しては選りすぐりの労働者だけが申請できるビザ条件になってくると思います。

そして、地方都市に関しては引き続き今のビザ条件を維持していくのではないのかと考えています。

実際に2019年には地方に移民を流すようなDAMAビザや地方に住むことでメリットが生まれるポイント制度の改革など手を売っていることからも容易に想像できますね。

いかがでしたでしょうか。

今回は移民受け入れ例年と比べて10%も減ったことについて、その背景や影響を考えてみました。

ちょっとしたことからオーストラリア移住のトレンドもわかるので移住計画に参考にしてくださいね。

ありがとうございました。

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